奇妙な形の野菜たち

Literature, photograph, music, guitar, and alcohol (sake, whiskey). What I love and never stop

アフリカからの帰り道

早朝にザンジバルタンザニア連合共和国の一つ)を出て、ついさっきドバイに着いた。外の気温は42°、飛行機のタラップに一歩足を踏み出した途端、熱風が体に纏わり付いた。ザンジバルは、サラッと涼しくて快適だった。今日はこのまま深夜までエミレーツが用意してくれたマリオットホテルで過ごし、明日の深夜2:40分のエミレーツで日本に帰る。

1990年代の半ばぐらいだったと思う。エミレーツが日本に就航したのは。1980年代の初めの頃から僕は頻繁に日本とアフリカを移動していたが、エミレーツが就航するまでは行き先のアフリカの国の旧宗主国であるヨーロッパの国々、すなわち東アフリカはイギリス、西アフリカはフランスが経由地だった。その一泊が凄く嬉しくて、束の間のパリやロンドンを楽しんだものだった。あの頃からもう30年が経ったんだ。

僕が写真や文章を書くのが好きなことを知っている娘が、ブログでも書いたらと勧めてくれて、始めてこの「はてなブログ」を書いている。そろそろ僕の仕事人生もお終いが近づいて来ている今、かつて仕事をした国々を思い出しながら、その頃感じた事、あるいは今気づいたことを、ブログに書き残していくのも良いかもしれない。

それは人々や社会から賞賛を受けたわけでも、注目を浴びたこともない仕事人生だったと思う。歩いても歩いても、ポロポロと砂粒がこぼれ落ちる砂漠の砂丘を歩くスカレベ(ふんころがし)の歩みに近かったかもしれない。新しい任務(国)に着く度に、一から勉強した。その国の自然条件、プロジェクトの背景、過去のプロジェクトのレポート、そして膨大な量の文献、論文。読んだ先からポロポロと溢れても、僕は歩き続けてきた。

古代エジプトでは、スカラベは聖なる昆虫として崇拝されてきた。スカラベは糞を重ねながら転がし、雪だるま式に大きな球体を作る。昔のエジプト人は、その球体を太陽に見立て、スカラベを太陽の運行を司る神、すなわち太陽神ケプリと同一視したからである。

僕の作った球体は、発表した論文や、従事した一つ一つのプロジェクトの塊であり、僕は今それを逆立ちして後ろ足で転がしながら、最後の居場所を探している。

写真は、赤い砂が美しい、ナミビアナミブ砂漠で撮影したスカラベ。糞を転がしている最中ではなかった。赤い砂漠のスカラベの足跡を見ていると、世界中の乾燥地で仕事をしてきた自分の歩みが思い出される。

赤い砂漠が美しいナミビアスカラベ