奇妙な形の野菜たち

Literature, photograph, music, guitar, and alcohol (sake, whiskey). What I love and never stop

生活の息吹が見える、ストーンタウンの小さなお店たち

今年の1月と2月はザンジバルの出張だったので、いそいそとフィルムカメラをもちこんで、週末はストーンタウンでカメラとお散歩三昧をしてきた。カメラは、今回は古いNikonでは無く、Leica(これも決して新しくは無いが)にした。そしてフィルムはFomapanを初めて使った。僕の大好きなブロガーさん、「ふえふき羊」さんはいつもFomapanを使っていらっしゃる。そしてインドで、チベットで、そしてラダックで、写真に吸い込まれてしまいそうなぐらい美しい白黒写真を撮影されている。同じフィルムを使えば、僕もこんなに素敵な写真が撮れるか?と言えばそれは明らかにNoであるが、僕はどうしてもFomapanを使ってみたかった。Fomapanは、チェコスロバキア製のフィルムで、その存在は知っていたが僕は使ったことがなかった。

3月初旬に帰国したが、その後フィルムを現像に出し、そしてネガをデータ化してというプロセスにすごく時間がかかったしまった。僕自身も仕事で忙しかったし。というわけでブログにアップするのもこんな時期になってしまった。

さて、唐突だが、実は僕には関西の血が流れていることからお話ししよう。父は神戸、母は姫路の出身で、当然のことながらほとんどの親戚は兵庫県を中心に関西に住んでいる。我が家の食事はしたがって、全て関西風だった。例えば麺類と言えば蕎麦ではなくうどん。高校生になった頃だろうか、初めて駅の立ち食い蕎麦屋に入り、真っ黒な汁の蕎麦が出てきて髪の毛が逆立つほど驚いたことがある。

僕が子供の頃、比較的頻繁に我が家に訪ねてきた親戚は、神戸のおじいちゃんと(父方の祖父)と大阪のおっちゃん(母方の叔父)であった。この二人の共通点は商売人であるということだ。我が家はその頃、毎週日曜日は日本橋のデパートに家族で出かけるのが恒例であった。しかし神戸のおじいちゃんと大阪のおっちゃんは、「デパートなんてアカン、アカン、近所の店でこぉてあげ」と言うのであった。そして僕を連れ近所のお店を一回り。子供目からみてもあまり格好いいと思えない運動靴や服を、近所の商店街の個人商店で買うのであった。関西弁丸出しで商店のおじさん(あるいはおばさん)に、「子供に人気の靴はありまっか?この子に履かせたいのやねん。いろいろ見したってや」とまくし立てるのが僕は恥ずかしかった。買い物が終わっても長々と、聞かれてもいない自分のことを関西弁でしゃべりまくり、僕は靴の入った紙袋を抱えながら店の外で下を向いているのが常だった。これを日本橋のデパートでやられたらたまらない。と僕は子供心にも恐れていたので、しょうが無いから近所のお店巡りに付き合うのであった。

しかし今から考えると、神戸のおじいちゃんも大阪のおっちゃんも、コミュニティー(Community)を尊ぶ人だったのだと思う。すなわち、その地域、あるいは社会、住んでいる場所としての町を尊ぶ。そして共通の利害を持つ住民を大切にする心があったのだと思う。そしてそれは神戸のおじいちゃんも大阪のおっちゃんだけでなく、昔の日本人はそういう心が残っていたのだ。それが僕の父親(デパート崇拝者)ぐらいの世代から壊れ始めた。そして今の日本は、特に東京は、完全にコミュニティ-なんて破綻している。僕も含め、都会の人間は近所の住人のことをあまりにも知らなすぎる。

おそらくほとんどの日本人が毎日のように利用するコンビニに、僕にはコミュニティーは見えない。完全にマニュアル化しているファストフード店に、僕は暖かみを感じることが出来ない。東京で、地域住民の生活の息吹が見えるお店は、これからもどんどん減っていくのであろう。

ザンジバルの首都、ストーンタウンは石造りの街並みが美しく、かつてアフリカ大陸からの奴隷や象牙などの輸出で栄えた港町であり、町全体が世界遺産に登録されている。10世紀頃からアラブ商人が住み着き、15世紀になるとバスコ・ダ・ガマが発見したインド航路の途中上陸地点となり、そのままポルトガル領へ。さらにオマーンやイギリスなどの支配を経たことから、街中はアラブ系とヨーロッパ系の文化が融合した独特の雰囲気に包まれている。こんなフォトジェニックな町で、僕は人々の生活の息吹が見える、素晴らしいお店たちをFomapanに収めてきた。

まずはストーンタウンの町並み。素晴らしきFomapanの描写力!

ストーンタウンは、70年代を代表するロックバンド、クイーンのヴォーカル、「フレディー・マーキュリー」の生まれた地である(両親はインド系ザンジバル人)。ストーンタウンは昔からヨーロッパの人たちにとって、アフリカのエキゾチックな観光地として有名になったが、何年か前の映画「ボヘミアン・ラプソディー」でそれに拍車がかかった。

それではみなさん、今から僕こと東京のおっさんがストーンタウンのお店巡りに案内しよう。

忍法、隠れ身の術!

服地屋さんで、忍者のように背景と同じ模様の布を用いて隠れる女性達を発見した。そんな訳ないか、隠れる必要なんて無いし。でも、そんな面白さを感じて思わずシャッターを切ってしまった。

店舗なんて必要なし。どこでも魚屋さん

漁師さんだろうか、大きなマグロとカツオを路上で並べ、集まってきた人と大声でやり取りしながら魚を売る。今朝の漁で捕ってきたばかり。エラがまだピクピクと動いている新鮮さ。お刺身にした美味いだろうなあ。静岡の県知事さん、僕にはこんな素晴らしい魚を捕る技術も知恵もありません。この漁師さんの「頭脳と知性」に、僕は拍手を送りたいのですが。

(引用:朝日新聞デジタル4月5日:静岡県知事は1日、県庁で新規採用職員への訓示で「野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノをつくったりということと違って、皆様方は頭脳、知性の高い方です」と発言。2日に辞職を表明した後、3日の記者会見で「心を傷つけたとすれば本当に申し訳なく、心からおわびする」と謝罪したが、発言は撤回しなかった。)

「店舗なんて必要なし」の第2弾、食器屋さん(ちょっとオーバー)

道端にちょっとスペースがあれば、何屋さんでも始まる。この気軽さがアフリカの良いところ。

これは珍しい!海鮮乾物屋さん

ザンジバルの人たちにとって、タコは非常にポピュラーな食材だ。道端でタコを素揚げしているお店は彼方此方で見られ、通りがかりの人が爪楊枝で1つさしてポンと口にいれて、コインをおいていく姿はよく見ることができる。しかしこれは珍しい。タコの干物と貝(多分アサリ)の干物を売るお店。魚類を干物にして食する文化は、アフリカでは非常に珍しい。

これ、何に使うの?

いろんな動物の皮屋さん。一番右はトカゲの形を残している。左のほうは毛の感じから山羊かなあとわかる。でもこれ、一体何に使うんだろう。今度の出張で聞いてみようと思う。

牛乳屋さん

バイク(ホンダのカブ)の荷台にミルクタンクを積み、町中の顧客にミルクを配達。そういえば、僕の子供の頃は家に牛乳屋さんが毎朝配達にきていた。勝手口のドアの外に、牛乳瓶を置く木の箱があった。

商店街の路地

この商店街は靴屋さんが多い。天井から沢山の靴がぶら下がっている。

骨董品屋のショーケース

ストーンタウンには骨董品屋も多い。アラブ、ポルトガル、さらにオマーンの商人達が10世紀頃からスパイスを求めやってきたザンジバル。当時の航海は命がけだったと思う。そんな時代のコンパスだろうか。想いがどこまでも馳せる。