一つ前の記事でフィルムの事を書いたので、もう一つ僕のフィルム愛に関して語ろうと思う。フィルムは、白黒は富士フィルムのネオパン400P RESTO、カラーはコダックのコダクロームを使っていた。どちらも、もう10年以上も前に製造を停止した。
写真はやはりザンジバルのストーンタウンでの撮影。2004年だ。ASA400故の粗めの粒子は、2Bの鉛筆でザラッとスケッチをしたような絵が撮れる。こんな絵は、デジタルでは絶対に出せない。
影と陰は違う。
光に遮られてできる黒い部分が”影”で、光のあたっていないところ、すなわち何かから隠れたところ、……あるいは見えないところ、それが”陰”だと思う。光に遮られた影は形がある、はっきりとした黒い形が。でも、陰には形が無い。
明るいところより暗いところ、表より裏……、あるいは、はっきりより曖昧なところ、僕がいつも心が引かれるのはこの陰の部分だ。ネオパン400P RESTOで撮影した絵には、当然フィルム写真なので光と影で織りなされているのだが、何かから隠れたところ、見えないところ、表からは見えない裏、思考の範囲を広げてくれる曖昧さをも、描いてくれると思う。
僕は表より裏、見えるところよりも目では見えないところが好きだ。