奇妙な形の野菜たち

Literature, photograph, music, guitar, and alcohol (sake, whiskey). What I love and never stop

内部収束

山で雨が降ると(平野でももちろん雨は降るが)、あるポーションは地表面から、あるいは植物から蒸発し、あるポーションは表流水(川)として地表に流出し、そしてあるポーションは地下に浸透して地下水になる。それらは地形の高い所から低い所に集まりながら流れ、最終的には海に流出する。そして太陽エネルギーにより海水や地表面の水は蒸発し、上空で雲となり、雨を降らせ表流水となり地下水となり再び海に至る。これを水循環と呼ぶ。水は絶えず循環している。

ところが、アフリカのような大陸に来ると、一循環の最後が海への流出ではなく、内陸部の地形の低い所に集まりそこで収束してしまう流域がある。我々はそれを内部収束流域(Internal Drainage Basin)と呼んでいる。僕の仕事は、大きな所では自然の水循環や水収支を変動させることなく人間が利用させていただける水量を評価(推定)することであるが、これらの内部収束流域は流域内で収束する独自の自然環境が存在するため非常にデリケートな配慮が必要である。

ナミビアの北部にはパン(Pan)と呼ばれる地形があり、これも一種の内部収束流域である。パンはフライパンのパンと同義であることを付け加えると、想像が付きやすいと思う。大きな地形図で見ると、ギザギザした分水嶺が大きな円を描いている。このパンの中には独自の生態系もある。

写真は、ナミビアで最大のパン(内部収束流域)のエトーシャ・パンで、乾期の終わり、すなわち一番乾燥している10月頃に撮影した。雨期が終わると(3月)、乾期が始まり(4月)、5月、6月、7月と、動物たちは水を求めパンの中心部を目指し移動する。パンの中心部が一番地形が低く、したがって水も集まるからだ。8月、9月、そして10月、パンの中心部にわずかに残った水場に全ての野生動物たちが集中する。そこにたどり着く前に渇き、死に至る動物も多い。

エトーシャ・パン、乾期最後の水場。一番大きなキリンの足元にわずかに水が見える。野生動物たちは普通、種で違う地域で集団を作り生活をする。この様にあらゆる種が同じ場所に集まってくるのは、この乾期の終わりだけ。

あるいは、美しいナミブ砂漠の中で見つけた小さな小さな内部収束流域。地形図を判読しても解らない、ナミビアの水資源を司る省庁の技術者も知らない小さな内部収束。この年は1/50年確立の降雨があったため、顕著に水が集まった。エトーシャのような野生動物は生息していると思えないが、小さな生態系はあるはずだ。

稜線の美しいナミブ砂漠で見つけた小さな内部収束。この流域にも小さな生態系が、自然の水循環の変化に応じて生命を営んでいるんだと思う

アフリカの内部収束流域は僕に多く事を教えてくれた。我々が持続的に使うことができる水の量は、ある瞬間に川、湖沼、地下水として存在する水の量ではなく、実は絶えず「循環する水」の一部であり、この水循環を健全に保つこととは、そこで生命を営む全ての生態系をも配慮しないといけないことだと思う。そしてそれは、人間のためだけじゃなくて。