奇妙な形の野菜たち

Literature, photograph, music, guitar, and alcohol (sake, whiskey). What I love and never stop

走り続けてきた僕を止めてくれるもの

僕はずっと走り続けてきた。世界中の砂漠を、荒野を、ブッシュを、サバンナを、ずっとずっと走り続けてきた。都市インフラ(空港、港湾、電力等)を専門にするコンサルタントは点(ある都市)での調査だが、我々水資源のコンサルタントは面的(広域なエリア)の調査が必要だ。砂漠を延々と貫く一本路を、ランドクルーザーで毎日400kmも500kmも走ってきた。信号も無い、交差点も滅多にない。対向車も、一日中走って一台か二台、出会う程度だった。

僕が走ってきた砂漠の一本道。エジプト、シナイ半島

僕が走ってきたサバンナの一本道。タンザニア、モロゴロ州、地平線まで続く道。

そんな僕を止めてくれたものは、例えば砂漠だったらラクダだ。ラクダは見かけによらず走れば速いのである。ただ、道路に進入してくるラクダの大概はベトウィンの家畜なので、前足二本をロープで短く結ばれており走ることが出来ない。したがって、道路に進入して来ても僕たちの前から直ぐにはどいてくれない。

ラクションを鳴らしてラクダを脅かそうとするドライバーを僕は止めた。数十分間もにらめっこになった。よくよく見ると、ラクダの目は可愛い。僕はしばらくここで立ち止まっていてもいいやと思った。

僕を止めてくれたラク

この仕事を始めてから、今年でちょうど40年になる。この40年間も、ずっとずっと走り続けてきた。砂漠の、サバンナの一本道とちがって、ずいぶん沢山の障害物があった。対向車もビュンビュンときた。車線を越えてきた危ない対向車もあった。それらを一つずつ片付け、躱し、走り続けてきた。でも、そろそろ僕の人生にも、あの時のラクダ君がヌッと僕の前に現れてくれるような気がする。

その時は喜んで、「ああラクダ君、僕を止めてくれてありがとう」って言おう。

ラクダに注意!」の道路標識。エジプト、シナイ半島