アフリカで仕事をしていると、人々の多彩な生活(拙稿、カラフルアフリカ参照)や野生動物達の多様性に驚くが、植物、特に不思議な形の樹木にも驚かされることが多い。例えばバオバブの木、あのお銚子(大酒飲みの僕だからそう見えてしまうのかもしれないが)のようなかっこした太い幹、ご存じの方も多いと思う。
このブログタイトルは「奇妙な形の野菜たち」である。野菜は、環境要因や障害により奇妙な形へ成長する。スーパー・マーケットで売っているような美しくまっすぐ伸びたにんじんや大根なんて、人工的な産物である。僕たちは、いろんな環境要因や障害で傷つきながら生きていく。僕も実に多くの障害物にぶつり、沢山傷ついてきた。その僕を奇妙な形にした環境要因を、これまで仕事をしてきたアフリカやアジアで撮ってきた写真を見直しながらたどっていく、というのがこのブログの趣旨である。
植物は約5億年前(オルドビス期)に地上へ進出し、次第に陸地を緑で覆っていった。植物の葉は、光エネルギーと水を利用して二酸化炭素から有機化合物を合成し(光合成)、その過程で水が分解されて酸素が放出されることは中学校の理科の生物の時間に習った。
しかし大気中の二酸化炭素濃度は、過去5億年の間一定であったわけではなく、大きな変化を遂げてきた。この変化は、植物の進化を促し、そしてその植物の進化は、他の陸上動物や昆虫の多様化に繋がっている。
「環境の変化」というと、その中で植物は受け身の立場であるかのように思われがちだが、実はそうではないのだ。地球の歴史の歩みは、植物が環境に影響を与え、その変化した環境が他の生物の進化に影響を及ぼす、すなわち、相互作用の結果としての歩みなのである。
でも、今、我々が環境に影響を与えているのはそんな生ぬるいものではない。人間が、生物として環境に影響を与えているのではないから。そしてその変化にかけた期間は、5億年では無く、せいぜい100年である。地球の年齢である47億年と比較すると、それは一瞬である。そしてそれは、産業と言う名の、経済という名の、かつて地球上にあり得なかった鋭い牙が、一瞬で環境を根元からえぐり取るような深い影響であることに気づかなければならない。
生物は、過去5億年の間に5回の「大絶滅」を経験している。2億年前(三畳紀-ジュラ紀)絶滅は、大量絶滅と呼ばれ、当時陸上を支配していた多くの生物が絶滅し、たまたま生き延びた恐竜たちの繁栄のきっかけとなり、そして恐竜は地上を支配した。しかしその恐竜も絶滅し、翼を持つことができた恐竜だけが、鳥類となって今も生き延びている。次の「大絶滅」は、いつ起こり、どの生物が絶滅に瀕するのか。それは絶対に人間ではないと言い切ることは出来るのか。
5億年かけて、自然の環境変化のゆっくりとした相互作用により実にユニークな形に進化してきたアフリカの樹木を眺めなら、僕はそんなことを考えてしまう。